木材ケアにみる一般的なオイルとワックスの基礎知識や用途、ならびに汎用性の高い木材ケア用品について。
一般にオイルとは、エンジンオイル(鉱物系)やオリーブオイル(植物系)などを想像するかもしれない。しかし木材ケアでいうオイルとは、主に植物の亜麻(アマ)や荏胡麻(エゴマ)の種子などから採取された速乾性や浸透性の高い植物油のことを意味する場合が多い。また、それ以外に米糠油や椿油などがもちいられる場合もあるが速乾性ではないため、機能面で木材ケアとは別の用途となる。
ワックスとは、一般に常温では固形化し加熱すると液体となる油(有機物)のことで、例えば蜜蝋や木蝋(動物・植物系)ならびにモンタンやパラフィン(鉱物・石油系)などがこれにあたるが、木材ケアでいうワックスとは、純然たるワックスではなく、前述したオイル(亜麻・荏胡麻など)にワックス(パラフィン・蜜蝋など)を添加したものを意味する場合が多い。なお余談となるが、ワックス(外来語)と蝋(日本語)の意味はほぼ同じである。昔は動植物系のものを蝋と呼び、鉱物石油系のものをワックスと呼んで区別したが、時代の変化にともない言葉の意味も変化したようである。
オイルの用途は、木材表面(建築部材・家具・楽器など)の清掃と質感の維持である。弱点としては、汚れやキズが付きやすく、保湿性や耐水性が低いことである。なお、木材の清掃に水を用いないのは、木材に歪みが生じたり腐朽したりする危険性があるからである。木材を清掃する場合は空拭きかオイルをもちいることが推奨される。使用頻度は、木材の汚れ度合いに応じて任意で行う。ただし、塗りすぎには注意が必要である。木材表面に膜が生じ木の質感を損ねたり大きく変色したりする可能性があるからである。1回で少量ずつ丁寧なメンテナンスを心がけてほしい。間違っても刷毛やローラーなどでガシガシ塗りつけてはいけない。また、速乾性ではない特殊な用途のオイルもある。例えば米糠油の艶出し、椿油の着色(アメ色の艶出し)などである。感覚としてはワックスやステイン(着色剤)に近いかもしれない。
ワックスの用途は、オイルに添加されるワックス(ワックス成分)の濃度により変化するが、一般的に流通しているワックスの主な用途は、床材(フローリングなど)の保護と艶出しである。弱点としては、木材表面がワックスの膜で覆われるため木の質感が損なわれることである。またワックスはオイルに比べると伸びにくいため作業効率が低く、塗布後に床を磨き上げる場合は根気も必要となる。使用頻度は、おおむね1年に1回程度で行う。ワックスは基本的に木材への浸透性が低いため、ワックスの塗布前にオイルを塗布する場合もある。
これまで、一般的に流通しているオイルとワックスについて説明してきた。簡潔にいうなら主な用途は「オイル=清掃」「ワックス=床用」である。しかし、これでは木材ケアの用途としては、かなり物足りないと感じるのではないだろうか。
一般的なオイルとワックスをワックス成分の含有量で比較した場合、「オイル[ワックス成分:希薄]<<<ワックス[ワックス成分:濃厚]」となり、かなり両極端な構図となっている。残念ながら、用途が幅広く汎用性の高い中間層のオイルおよびワックス(以下、中間的な塗料)は認知度が低く一般にあまり流通していないのが現状である。
実は、ワックス成分が適切に配合された中間的な塗料は、オイルとワックスの弱点を解消することが可能である。具体的には、塗布した感覚や仕上がりはオイルとほぼ同じだが、ワックスの保護力(汚れやキズへの耐性ならびに保湿性や撥水性)もきちんと備わっている。一般的なワックス(主に床用)に比べると、床材での保護力は若干落ちるが、木の質感が損なわれないことを考慮すると、こちらを選択するメリットは大きい。使用頻度は、おおむね半年~1年に1回程度で行う。用途としては、建築部材・家具・楽器など幅広く活用できるので、今までオイルを使っていた人は、一度試してみることをお勧めする。
ただし、中間的な塗料よりオイルの方が適している場合も存在する。例えば、広葉樹で作られたテーブルなどである。広葉樹(栗・楓・桜など)は針葉樹(杉・檜・松など)に比べると、非常に硬い木材であるためキズが付きにくい。キズが付きにくいということは、空拭きやオイルによる木材ケアで事足りるかもしれない。
いずれにしても、ケアする素材の性質と塗料の特性を十分に理解して、自身の判断で能動的に手段を選択して行くことが重要である。また、自らのニーズに適した塗料を手作りしてみるのも良いかもしれない。
なお、当サイトで販売している木工美肌(蜜蝋フィニッシュ)も中間的な塗料である。天然木材を使用した建築部材・家具・楽器・道具類などの仕上げ・お手入れに適している。
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